人手不足はチャンス?労働生産性を高める4つの方法

日本では、少子高齢化により、労働力人口が減少しています。この人手不足の状況は、経済成長や社会福祉に悪影響を及ぼす可能性があります。しかし、人手不足は必ずしもマイナスの要因とは限りません。人手不足に対応するために、労働生産性を向上させる取り組みが行われれば、逆に経済や社会にプラスの効果をもたらすことができます。

この記事では、このような現状を踏まえ人手不足と労働生産性の関係について、以下の四つの点に分けて説明します。

労働生産性とはなにか?

 まず、労働生産性とは労働者一人あたりの付加価値の量を表す指標であり、「付加価値÷従業員数」で表されるものです。すなち、労働生産性が高いということは、少ない人数で多くの価値を生み出していることを意味します。なお、前述の計算式の分母を「総労働時間」として表される指標を「人時生産性(従業員1人の1時間あたり生産性)」といいます。
 日本の労働生産性は「労働生産性の国際比較2022(日本生産性本部)」においてOECD加盟37か国中27位であり、低い水準にあることが公表されています。この原因はデジタル化の遅れなどによる「長時間労働」にあるということがよく言われますが、実際の日本の労働時間はOECD「労働時間」では46か国中19番目に少ないという調査結果となっていることから、低生産性に大きく関係している要素は日本全体の労働生産性の分子がGDP(国内総生産)ということを考えれば「デフレ」であることが考えられます。

出展:OECD「労働時間」

人手不足の現状と見通し

一方で、人手不足は日本の深刻な社会問題です。リクルートワークス研究所によると、2023年3月に2040年に国内で1100万人の労働力が不足する見通しを公表しました。また、日本商工会議所が2023年7~8月に全国の中小企業を対象に実施した調査によると、人手不足と回答した企業の割合は68.0%と2015年の調査開始以降で最大の割合であったことも公表されています。いますでに必要人材が採用できず、サービスを限定するケースや人手不足倒産といった深刻な問題が顕在化しています。

労働生産性を向上させるにはなにをすべきか?

このような人手不足に対応するためにも、労働生産性を向上させることが求められています。すなわち、少ない人数(インプット)で高い付加価値(アウトプット)を実現させるということです。つまり労働生産性を向上させる方向性は、①インプットを増やした以上にアウトプットを増やす ②インプットをそのままにアウトプットを増やす ③インプットを減らす ということになりますが、具体的な方法は労働生産性を下図のように分解して考えることが有効です。

労働生産性(1人あたり付加価値額)は「1人あたり売上高×付加価値率」に分解され、さらに1人あたり売上高は「労働装備率×有形固定資産」分解することができることが分かります。この分解式を理解したうえで労働生産性を高める方法を見ていきます。

■労働生産性向上施策の事例
①技術革新やデジタル化の推進
人工知能やロボット、クラウドなどの先端技術を活用して、業務の自動化や効率化を図ることができます。デジタル化により、リモートワークやオンライン会議などの新しい働き方も可能になります。

②労働環境や労働条件の改善
長時間労働や過重労働を減らし、労働者の健康や安全を保護することができます。労働環境や労働条件を改善することで、労働者のストレスや疲労を軽減し、モチベーションやパフォーマンスを向上させることができます。

③人材の育成や教育の充実
労働者のスキルや知識を高めることができます。人材の育成や教育により、労働者の能力や適性を最大限に発揮させることができます。

④働き方の多様化や柔軟性の確保
女性や高齢者、外国人などの潜在的な労働力を活用することができます。働き方の多様化や柔軟性により、労働者のニーズやライフスタイルに合わせた働き方を選択することができます。

まとめ

人手不足は、日本にとって大きな課題ですが、それを機に労働生産性を高めることで、新たなチャンスに変えることができます。人手不足と労働生産性の関係を正しく理解し、効果的な対策を講じることが重要です。